• 日常生活支援
  • 2021.6.10

朽木瑛浩

高齢ドライバーの現状と安全対策!

高齢ドライバーの現状と安全対策!

高齢ドライバーの実情

高齢ドライバーによる交通事故は、近年メディアでも多く取り上げられ、深刻化している社会問題のひとつです。
なぜ、交通事故に占める高齢ドライバーの割合が高いのでしょうか。

高齢ドライバーの特性に注目すると、加齢に伴う様々な身体能力の低下により、周囲に対しての注意力の低下や運転操作の遅れが生じます。
そのようなことから交通事故を起こすリスクが高まっていくようです。

しかし、身体能力の低下や運動能力には個人差があるので一概には言えません。
また、生活する上で車が欠かせない方や運転が生きがいである方もいらっしゃいます。

そこで、運転事故を防ぎ、いつまでも安心で安全な運転を続けていくための行動を考えていきましょう。

ー自分の運転を知ろう!ー

「運転には自信がある」という人ほど注意が必要です。
高齢者に関わらず、事故を引き起こす大きな要因は、運転に対する慢心です。

「この道は毎日通っているから安全だろう」「対向車はきっと停止するだろう」といった、“だろう運転”による事故も多くみられます。
このような事故は、丁寧な運転を心がけ、定期的に自分の運転をチェックする機会をつくれば、防げる場合があります。

高齢ドライバーの運転チェックについては、警視庁が以下の『運転時認知障害早期発見チェックリスト30』を掲載していますので、参考にしてください。
チェックは運転者自身で行うものですが、同乗者にしてもらうのもよいでしょう。

また、同乗者がいない場合は、ドライブレコーダーやスマートフォンなどを固定して運転を撮影すると、客観的に自分の運転を確認ができるので、安全かどうかを判断する材料にしてもよいでしょう。

そして、安全運転には、運転前の段階から準備が必要です。
事故を防ぐためには、体調がいつもと違うと感じたら運転を控える。
「雨の日は運転しない」「遠出の運転はしない」といった、自分の運転を知った上で、マイルールを決めておくこともよいでしょう。

ー「運転寿命」延ばそう!ー

「健康寿命」と同様に注目されている「運転寿命」は、加齢に伴う身体能力や認知機能の低下を防ぎ、安全に車を運転できる期間を長く保とうという考え方です。
高齢者が運転を続けると、脳にも好影響を与えます。

ある調査では運転をしている高齢ドライバーは、運転していない人に比べて約4割も認知症のリスクが低いことが判明しています。
また、運転を辞めた人の要介護リスクが、運転を継続していた人に比べて約8倍に増えることも分かっています。

「運転寿命」を延ばす為にも自宅で簡単にできる運動をご紹介します!
運動を行うことで身体能力の向上が期待できますので、まだまだ運転を希望される方は参考にしてください。

ー安全運転を続けるための体の鍛え方ー

①首と背中のストレッチ
椅子に座り、体を左右にひねります。
この動きを柔らかくすることで、後方を確認する時に足の位置がずれにくい体を作ります。
【左右とも10秒・3セット】

②肩甲骨まわりのストレッチ
椅子に座り、胸の前で手を組みます。
肘を上げ、腕を前後に動かすことで肩甲骨まわりを大きく動かします。
肩甲骨まわりが柔らかくなると、ハンドル操作のミスが起きにくくなります。
【10回・3セット】

③腹筋の強化
椅子に座り、腰に手をあて上を向きます。
鼻からゆっくり空気を吸い、下を向き口からゆっくり吐きます。
運転姿勢が安定し腰痛予防に繋がります。
【10回・3セット】

④足の筋力の強化
ゆっくりと立ち座り運動を行います。
足の筋力を鍛えることで、アクセルやブレーキを早く、強く踏み込めるようになります。
【10回・3セット】


◆注意点◆
・痛いところまで体を動かさない
・反動をつけず、ゆっくり動かす
・膝や腰などに痛みが出たらすぐに中止し、専門家に相談する

ー70歳から変わる!運転免許更新手続を解説ー

免許証の有効期限が間近になり、運転に自信がある方や、不安から更新を行うべきかを悩む方もいらっしゃるはずです。

まずは、案内が届いたら早めに講習を受講することが大切です。
高齢者講習や認知機能検査を行い、基準を満たすことで安心して免許証を保持することが出来ます。

高齢者講習は、免許証更新の際に70歳以上の方が受ける講習で、運転適性検査や講義、実車指導等を行い、受講後は終了証明書が交付されます。
認知機能検査は、75歳以上の方が免許証更新時に受ける検査で、認知機能を自覚して安全運転を続けるための支援を目的に、記憶力や判断力等を測定します。

運転技術や身体能力に自信のある方は、誕生日の5カ月前から受講できる特定任意高齢者講習(チャレンジ講習・簡易講習)に挑戦してみてもいいでしょう。
合格すると、高齢者講習は免除され費用が少し割安になります。
※金額等は上の図をご参照下さい(2021年6月現在)

このような講習や検査を通じて、自身の運転能力を把握することが大切であり、安全運転の継続に繋がります。
一方で、自ら運転に不安を抱いている方や、客観的に見て運転リスクが高まっている場合は、免許証の自主返納のタイミングを決断する必要があります。

ー免許返納のタイミングの作り方ー

いくら気を付けて運転していても、免許証の返納など、運転をやめる決断が必要になるときが必ず来ます。
迷っているうちに、認知症の疑いから免許を取り消されたり、失効後は自主返納ができないため注意が必要です。

自主返納するメリットとしては、返納時に申請すると「運転経歴証明書」が交付され、運転免許証と同様に身分証明書として使用することができ、有効期限もありません。
また自治体によっては、様々な特典や優遇措置を受けることができます。

例えば
・公共交通機関の料金の割引
・タクシーの割引
・レジャー施設の割引
・飲食店などの割引  など

思った以上に多くの特典を利用することができます。
各自治体ごとの特典は高齢運転者支援サイトを参考にしてください。

60歳を過ぎたら、何歳まで運転するか、どういう状況になったら返納するかを、あらかじめ決めておくとよいでしょう。
運転以外の移動手段を検討しておき、少しずつ車のない生活を始めてみることです。
そうすることで、運転卒業のタイミングと卒業後の生活のシミュレーションができ、心の準備も自然と整うでしょう。

まとめ

□「だろう運転」をしない
□定期的に自分の運転をチェックする
□「運転寿命」を伸ばすために日頃から運動をする
□70歳からの更新手続の違いを理解し、自分に合った講習を速やかに受講する
□自主返納後の自治体の特典を知る
□免許返納後のシミュレーションをしておく
□運転卒業のタイミングを逃さない

最後に

【元気なうちから準備を進めましょう】
年齢を重ねれば、誰もがいつかは安全運転が難しくなるものです。
運転が不安になる前から計画的に準備を進めることが、安全で快適な生活を送るための”カギ”となります。

日頃からサポートしてくれる人が近くにいない方や、お住いの環境によっては「これまでのように気軽にお買い物が行けなくなってしまう」「病院に通うのも一苦労する」など、以前の生活に比べ行動範囲が狭くなり会話する機会も減ってしまうという問題があります。

そのようなお悩みや不安をお持ちの方に、日常生活の支援を行っている会社に相談してみることも、一つの手段としてお勧めします。